時代劇が好きです!子供のころから時代劇ばかり見ていました。(祖父母の影響)
若年寄とバカにされていた時代を経て、ついに時代が私に、ではなく私の年齢が追いついた(笑)
他にも私には謎の若年寄的な趣味嗜好があります。(これも子供時代の過ごし方の影響が大きい)
今日はその中でも時代劇のお話を書きます。
今日のテーマはこのところよく見ている「将軍家光忍び旅」について。



■「将軍家光忍び旅」はごちゃまぜの美学

これまで見た時代劇の中で私が一番好きなのは「雲霧仁左衛門(山崎努版)※特に14話」、股旅モノでは「次郎長三国志(高橋英樹編)」、が2TOPであることは言うまでもないのですが、バラエティ系勧善懲悪モノでは「将軍家光忍び旅(三田村邦彦主演)」がお気に入りです。

この「将軍家光忍び旅」は三代将軍家光(三田村邦彦)がなぜかコロッケ(芸人のコロッケです。ちあきなおみの物まねを変顔でやるあのコロッケ)を自分の代役に置いて、家光本人は江戸から京まで旅をしながら悪を退治するという、「暴れん坊将軍」+「水戸黄門」+「桃太郎侍」のオイシイところ取りMIXのような番組です。
それだけではなくキャスティング的にはあの往年の名作刑事ドラマ「太陽にほえろ」+「必殺シリーズ」の同窓会要素もアリアリでございます。

かんざし職人で仕事人の「秀(ヒデ)」であり太陽にほえろの「ジプシー刑事」でもある三田村邦彦が、テキサス刑事(勝野洋)演じる柳生十兵衛と共に旅をするんですね。(笑)

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テキサス刑事(勝野洋)=柳生十兵衛と
ジプシー刑事(三田村邦彦)=三代将軍徳川家光公
(写真は「時代劇専門チャンネル」より)


■家光を取り巻く人々と配役など
 
ご老体が「ちりめん問屋のご隠居」として下っ端を連れわがまま放題に全国を漫遊する「水戸黄門」に比べ、若き日の凛々しい三田村邦彦が「まだ世間を見たいんだ!」という若き将軍家光を演じている関係で、お供の柳生十兵衛も現役バリバリ、恋もしたりする(笑)そして物語は影武者として大名行列~本陣宿泊を繰り返しながら同じように江戸から京に向かうコロッケ家光のシーンと、徳山竹之進と名乗りながら旅をする本物の家光(三田村+勝野)一行のパラレルワールドとして展開します。

この二つの世界をつなぐのが一流俳優・神山繁が演じる大久保彦左衛門です。
 
神山繁と言えば「警視総監」だの「検事」だの、刑事ものにおける「偉い人」役の定番のような人であり、もちろん「太陽にほえろ」では副警視総監(警視副総監?)でした。そして時代劇においては常に「私腹を肥やす悪代官」を裏で糸引く「黒幕」のポジションです。チャチな悪者ではなく、ラスボス級に身分の高い悪役。当然、必殺でも何度も仕事人にやられてますし、暴れん坊将軍においても松平健演じる吉宗やお庭番の皆さんに「成敗!!」と切られるか、「そこに直れ!!」と叱りつけられて切腹したりと死に忙しいお方です。
 
この神山繁演じる大久保彦左衛門が、将軍としては知識も品格もまるで素質なしのコロッケ演じる進吉を、お城や大名行列移動中、そして本陣宿泊中などでフォローしたり叱り飛ばしたり、いびきをかいて居眠りしている時には籠を蹴り飛ばしてたたき起こすなどしてホンモノの家光の留守をどうにか守らせているんです。

一方、例によっていつも何かの事件に巻き込まれる徳山竹之進(本当は家光)たちがピンチの際にはこの大久保彦左衛門が「将軍家側用人の大久保彦左衛門じゃ!!」と印籠こそ出さないけれど周囲をひれ伏させ、何が何だかわからないうちにその場を収めたり、若き将軍家光の世間を知る無茶な旅を一生懸命応援している感じなのですね。
 

■「将軍家光忍び旅」の主役スタンス

まずは「将軍家光忍び旅」に影響を与えたであろう3番組における主役の基本的スタンスを比較してみます。

(1)暴れん坊将軍は「好奇心の強い若将軍」
吉宗(松平健)は普段はお城で仕事をしていて(現役)、抜け出しては「め組」(初代頭は北島三郎・主題歌も歌ってた)にゴロゴロしながら「事件との遭遇」を待っている感じ。

(2)水戸黄門は「リタイアしたやり手の会長」
既にバリバリに働いて引退後にリタイアメントホリデーを楽しんでいる会社でいえば「相談役」みたいな人。
この方は「余生を世のため人のために尽くすのを生きがいとする」という気骨のガンコ爺的なポジションです。

(3)桃太郎侍は「兄のため世を捨てた弟」
あまり知られていませんが、桃太郎は「徳川11代将軍家斉の御落胤」で、松平備前守新之助(高橋英樹・二役)の双子の弟である松平鶴二郎(高橋英樹)がお兄さんの迷惑にならないよう家を出て「浪人・桃太郎」って名乗っている設定です。驚きましたか(笑)この方はある種の世捨て人なんですね。

そこで本題の「将軍家光忍び旅」です。
この家光(三田村)は、完全に将軍職を放置し(!)、こともあろうに旅役者の進吉(コロッケ)をスカウトして代役に据え、政治などは(多分)爺である大久保彦左衛門にお任せしてしまい、本来ならば将軍家やその周辺、ひいては江戸幕府の守護につとめるべき柳生十兵衛(勝野洋)を自分の警護につけて楽しげに団子を食べながら旅をしているとい有様(苦笑)
そしてそれを意味不明に「竹之進さま~」と黄色い声で追いかけてくる女性キャストがころもあろうに萬田久子(苦笑)しかも職業が女スリという、苦しい~。
「将軍家光忍び旅」の家光はズバリ「三田村邦彦」という凛々しい系の役者に全部キャラをおんぶしていて、本来の家光の仕事はどうなんだ、とかそういう部分はあまり考えないことになっているのです。その分エンターテイメント要素が非常に強いのだともいえます。


■余談 私が必殺を苦手な理由

私がどうして必殺が苦手か、と申しますと、あの全編に流れるの「やりきれなさ」や被害者の方の「あまりにも無念すぎる惨いお亡くなり方」、「例え悪を成敗したところで二度と取り返しのつかない虚無感」、あれが胸を締め付けるのであります。
だから、本来は「子連れ狼」も、幼子でありながら「冥府魔道に生きる大五郎」や、巻き込まれて死ぬ一般人の多すぎる点、メイクが怖すぎる拝一刀(@萬屋錦之介)、楽しい要素が一切ない暗すぎるテーマ、などもキツいことはキツいのですが、この子連れ狼はいろいろな意味で時代劇の要素を純粋に持っている番組だと思うので心を鬼にして頑張って見ている。


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北大路欣也版ならまだしも、萬屋錦之介演じる拝一刀は怖すぎる。
 (写真は「時代劇専門チャンネル」より)


「必殺」の適当すぎる時代設定や行き過ぎた現代要素も苦手の理由です。その対極に位置する「鬼平犯科帳」を筆頭とする池波正太郎の凛とした時代考証には脱帽するけれど、「その後の二人を見たものは誰もいない」的なフェードアウトはどうもすっきりしない。
鬼平犯科帳はどこまで行っても警察vs犯人であり、警察側(鬼平こと火付盗賊改頭の長谷川平四郎)に人間的温情がある、犯人側のそれなりの事情を配慮する、などの要素が面白いの。けれど楽しげな番組ではないのね。
同じく池波正太郎の「剣客商売」に至っては、あのような「枯れた世界観」には私はまだ到底達していないので、見ていても何が面白いのか良く分からない・・・。特に息子役が加藤剛の前シリーズは、チャンネルを変えた瞬間「大岡越前」と見分けがつかないためとても迷惑してます。 

余談ですが、池波正太郎の世界がまだ私には早すぎるのだろう。いずれ私の年齢が追い付けばあの「枯れた世界観」を「いとをかし」と味わえるのかもしれない。その片鱗はあるのです。なぜなら私がこの記事の最初に書きました私の好きな時代劇2TOPの一つ、「雲霧仁左衛門(山崎努版) 」は池波正太郎原作なのです。
おそらく原作だけでは全く楽しさを感じなかっただろう池波作品が「山崎努」「石橋蓮司」という配役により私の中でOKになったのだろうと思う。
一方で山岡宗八という作家作品は小説を読んでも面白いし、漫画やアニメ、実写でもなんでも面白いので作風が好きなのだろうと思います。池波正太郎作品は「実写映像化してようやく少し食べられる」レベルの消化力が今の私の実力。(苦笑)
山岡宗八作品は「どのような調理法でも完食の自信あり、大好物」なのです。

 
まとめますと
・あまりにむごたらしい、無念すぎる死はだめ
・エンディングが明快なもの(エンディングがフェードアウトは問題外)
・全編に渡って暗い雰囲気は苦手

ゆえに必殺は苦手、という結論になります。


■そこで家光ですよ!


見ていて精神的に安心なのはやはり「暴れん坊将軍」です。してこの「将軍家光忍び旅」は暴れん坊将軍がお休みの期間に穴埋めリリーフ的に作られた番組だったせいか、暴れん坊将軍でやれなかった遊び部分を全部ぶっこんである気がします。
ゆえに面白い。都合の良い設定やあり得ないだろうの突っ込みどころ満載のストーリーもいい。「暴れん坊将軍」で人気を博し、時代劇の制作陣も出演者もヤル気満々で面白おかしく作っていただろうことが画面から感じられる。
戦国動乱を生き抜いた初代将軍家康時代は間違っても全国漫遊などできなかっただろうし、二代将軍秀忠時代も日本はまだ騒然としており徳川安泰時代には程遠かったと思われる。生まれながらの将軍である三代家光の時代だからこそ、治安の要である柳生十兵衛をプライベートボディガードに連れ出して、女スリをお供に世間を見て歩く、という無茶な設定が可能なのです。

語り出したらきりがないのだけど、時代劇は本当に面白い。むろん全てが本当の訳がないし、第3代将軍や8代将軍、副将軍がそんなにフラフラと旅をしながらあちこちで切った張ったと刃傷沙汰を起こして回る訳がないってば。
ちなみに「将軍家光忍び旅」はなんとパート2もありまして、パート1は往路、パート2は復路です。帰りは京~江戸を中山道をメインに帰ってくるんですね、手の込んだ設定です。
 

■おまけ 柳生十兵衛という人
柳生十兵衛は柳生一族の長男で、父の柳生宗から柳生一族の財産(家長としての立場も含め)の全てを受け継いだけれど、けっこう早く死んでしまう。(42歳)後を継いだのは弟(次男)で、「子連れ狼」の悪役である柳生烈堂はそのさらにずっと下の年の離れた弟。後を継いだ次兄と折り合いが悪くて冷や飯食いになってしまいグレてしまった、という説あり。
つまり家光と一緒に旅をして悪を退治して回っている十兵衛(勝野洋)と、子連れ狼の元公儀介錯人・拝一刀と大五郎の親子を執拗に狙い、見境なく周囲の人を皆殺しにしていく悪の枢軸である柳生烈堂とは実の兄弟、とういうことになりますな。


その他、時代劇界において異彩を放つ田村三兄弟の「仕事を選ばない出演ぶり」なども機会があったら書きたいものです。
ここで標語。

「時代劇、一話一話を大切に。」
あの番組のあの話とこの番組のこの話のつじつまを合わせようなんて思ってはいけない。一話一話のフィクションを楽しみましょう。